誤解を招く「ためしてガッテン」とさらに誤解を招くJ-CASTの記事

(12月7日 円グラフと注記を追記)

J-CASTの記事と元になった「ためしてガッテン 2009年11月25日放送回 吸ってなくても!謎の肺がん急増中」について。(ブックマークでは書ききれ無かったので)

実数はどうなのか

「女性の方はむしろ、タバコを吸っていない人に(肺がんが)多く見られます」

という専門家の言葉と『喫煙』2割『不明』8割の円グラフだけ出して「こわーい」とゲストに言わせる手法に違和感を覚えました。

実数はどうなのか大雑把に調べてみました。
公益財団法人 がん研究振興財団
部位別がん罹患数(2003年)(pdf) より
男性 55,928例 の(不明な原因3割) = 16778.4
女性 22,817例 の(不明な原因8割) = 18253.6
(3割、8割はためしてガッテンで示していた大体の割合です。)

あれ?女性に多いっていうほど多くないんじゃない?
(この計算、間違っていたらどなたか教えてください。)

男性:喫煙が49.7%、男性:不明が21.3%女性:不明が23.2%、女性:喫煙が5.8%です。
(注記:ただし、これは正確なものではありません。ためしてガッテンで示していた3割、8割という大体の割合で、「女性に多い原因不明の肺ガン」が男性、女性合わせてどの程度を占めるものか、仮想的に出した割合です。ちゃんとした割合を求めるには、まず原因別の罹患数を調べる必要があります。)

「女性の方はむしろ、タバコを吸っていない人に(肺がんが)多く見られます」

という専門家の言葉も確かに正しいのですが、女性は喫煙率低いんだから喫煙由来の肺ガンは少ない→相対的に非喫煙の肺ガンは増えるという情報や、肺ガンの絶対数は女性の方が少ないという情報を出さないのは、誤解を招くと思いました。

治療が効きやすい

番組でスタジオゲストの先生が言っていたのは今回のテーマの「女性の原因不明のガン」は「治療が効きやすい」ということ。二人めの先生が「二年に一回の検査」と言っていることとあわせると、進行の遅いガンなんでしょう。

J-CASTの記事では

ただし、たばこを吸っている人はもっと短いタームでCT検査が必要だとも。

となっていますが、自分が番組を見た感じではニュアンスが違います。
スタジオゲストの先生が言っていたのは、「ヘビースモーカーの場合、半年ごとのCT検査でも、半年前何にも無かったのに、半年経ったら突然出てくる」というような内容のことでした。
「ヘビースモーカーの場合は、半年ごとにCT検査しても、うまく早期発見して、治療できるとは限らない。」という意味に感じました。

なんらかの化学物質

番組中では今回のテーマの「女性の原因不明のガン」の原因は、
避けられない異物など(=空気中のなんらかの化学物質)+女性であること(=女性ホルモン)
としつつ、「タバコ煙に含まれる化学物質はおよそ4000種」と紹介して、避けられない異物=空気中のなんらかの化学物質は、絶対タバコは関係ないとは言いきれないとし、冒頭の肺ガンになった非喫煙者の女性も、喫煙者と接触することがしばしばあったことを言っていました。

子供の尿のニコチン代謝

換気扇族、ベランダ族のお父さんのいる家庭の子供のニコチン代謝物の量が、喫煙者のいない家庭の子供に比べて4倍以上という情報。タバコを吸った後五分間は肺の中にタバコの煙が残っていて、その影響であろうということ。
※このコーナー、本題と関係が薄く、番組の尺を埋めるためのコーナーかと思いました。

番組の結論(ゲストがガッテン、ガッテンをするところ)

  • タバコを吸わないからと言って肺ガンにならないとはいえない
  • タバコを吸わない女性は二年に一回のCT検査で早期発見

でした。これだけなら当たり障りのない内容なのですが、番組を要約した(であろう)J-CASTの記事だと印象が結構変わっています。

私の結論

  • ためしてガッテンの内容はまぎらわしい、誤解を招きかねない
  • J-CASTの記事は元番組のせいもあるが、さらに誤解を招きやすい